新潟県新潟市 吉澤 浩行(よしざわ ひろゆき)さん
(取材時:2020年10月)
「混合剤のアクサーフロアブルは耐性菌発生のリスクを低減できるので使いたい。」
米どころ新潟市の南区は、日本一長い川である信濃川と中之口川が流れ、肥沃な土壌に恵まれた、稲作や果樹栽培が盛んな地域です。
なかでも、この地を発祥とする西洋ナシのル レクチエは、酸味の少ない濃厚な甘みと、とろけるような舌ざわりから「洋梨の貴婦人」「幻の洋梨」との異名を持ちます。その歴史は古く、1903年にこの地で農業を営む故小池左右吉氏がフランスから苗木を導入したことから始まります。
当時は農家が自家消費用に栽培を続けていましたが、いつしかその美味しさが評判となり、栽培が本格化。現在、国内産の8割は新潟で栽培されています。その一方で、栽培や追熟が難しいことから、原産地のフランスでは今はほとんど栽培されていません。
そんな新潟県を代表する特産物、ル レクチエの栽培に携わる吉澤浩行さんは、高校卒業後に実家の家業を継ぐため就農しました。当時は水稲を基幹作物としていましたが、ご自身の将来像を考えた時に、興味のあった果樹栽培に力を入れてみたくなり、他の産地での研修を決意します。「当時、家でも果樹は作っていましたが、本格的な栽培を行うには知識や経験が不足していました。そこで、親に頼み込んで埼玉県鴻巣市へ研修に行くことにしました」。埼玉県を選んだのは、研修期間が冬場で、もし地元が雪害にあった時に上越新幹線ですぐに帰ることができるように、と笑顔で話す吉澤さん。地元を離れ、初めての研修の期間は3か月でしたが、その後も数回、研修に通ったというお話からも、果樹栽培にかける意気込みを感じます。農地も転作で洋ナシや桃などの面積を増やし、現在1.5haほどの樹園地を管理しています。
気品ある佇まい、とろけるような果肉の味わいから「洋梨の貴婦人」「幻の洋梨」とも称されるル レクチエ
混合剤は耐性菌管理に有効
果樹栽培でのこだわりに、吉澤さんは「草生栽培」を挙げます。「土壌や消費者の「安心・安全」志向に考慮して、草生栽培を実践しています。ただし、草を伸ばし過ぎると害虫の住処になってしまうので、草刈りのタイミングには気を付けています」。
病害虫防除はJAの防除暦にそって行います。「ル レクチエは果面の美しさが商品価値を左右しますが、薬剤によっては果面に影響が出てしまうものもあります。その点、JAの防除暦は長い年月の中で得られた知見を基に作られているので、安心して薬剤防除ができます」と話します。今年は防除暦に採用されたアクサーフロアブルを初めて使用。「アクサーフロアブルは5月の重点防除期に使いました。最近の気候変動で問題になる病害虫も変わり、防除暦も毎年見直しをする必要がある。そんな中で選ばれた薬剤なので、信頼感があります。また、指導機関からは耐性菌を出さないよう注意してほしいと言われていますが、アクサーは混合剤なので、耐性菌対策としても有効ですね」と、特性を十分理解されているご様子です。
現在、吉澤さんは自身の経験を基に、若い生産者に率先してアドバイスを送り、産地を盛り上げます。「ル レクチエは栽培が難しい作物ですが、JAや生産者仲間にたくさんのことを教わりました。県外にも研修に行きましたが、その時の経験もとても役に立っています。「洋ナシと言えばル レクチエ」と言ってもらえるように、その美味しさを全国に広めていきたいです」と、最後にこれからの目標を教えてくれました。
「BASFさんの殺菌剤は混合剤というイメージ
耐性菌発生のリスク低減に有効です」
JA新潟みらい 営農指導員
中村 啓一さん
アクサーフロアブルは作用機作の異なる有効成分の混合剤という点が防除暦の採用の決め手になりました。耐性菌発生のリスク低減のため、単剤や同じ系統の薬剤の連用は避けていただくよう、JAからもお願いをしています。混合剤は耐性菌管理にもなるし、殺菌スペクトラムの幅も広がります。また、使用面でも混用の手間が省けて便利です。BASFさんの薬剤では、アクサーフロアブルの他にもナリアWDGを採用していますが、どちらも混合剤なのでいいですね(笑)。これからも、効果が良く、できるだけ安価薬剤を開発して欲しいです。