埼玉県北本市 内田泰宏(うちだ やすひろ)さん
(取材時:2020年11月)
天敵にもやさしく、混用で大きな効果をもたらすカスケード
農地と住宅地とが隣り合わせに混在し、生産者と消費者との距離が近い埼玉県北本市。この地で専業農家に生まれ、30年以上も消費者目線に立った高品質な露地野菜を作り続けている(株)ベジファーム北本 内田農園代表の内田泰宏(うちだ・やすひろ)さん。
2020年11月にはその功績が認められ、埼玉県農業大賞を受賞。産直販売の先駆け的存在でもあり、消費者が信頼をよせる内田さんの農作物は特別栽培農産物に認定されています。
ベジファーム北本では約22ヘクタールの農地に、キャベツ、レタス、白菜などの葉物野菜を中心に年間60品目の露地野菜を栽培し、土着天敵を使った害虫防除など、消費者目線での安全な栽培法を実践しています。
埼玉県北本市
株式会社ベジファーム北本 内田農園
代表取締役 内田泰宏様
6年前のコナガの大発生で使い始めたカスケード
そんな内田さんのキャベツ畑に、6年前に突如コナガが大発生し、それまで使っていたジアミド系の薬剤が全く効かなくなってしまいました。
「それまでカスケードは脱皮阻害剤だと思っていて、単剤としてのみ使っていました。ですが混用できると知って、半信半疑で使い始めたんです。そうしたら明らかに食害が減ってきて。混用してみたら、それぞれ単剤で使用していた時より効果が飛躍的にあがって驚きました。さまざまな混用パターンを試しましたが、2019年に新発売された殺虫剤との組み合わせが一番効きます」と、内田さん。
4000倍希釈を結球し始めの時期に1回のみ散布
特別栽培農産物の認定を受け、できる限りの低農薬で散布回数を減らす栽培方法を実践している内田さんが、春キャベツの栽培において定植から収穫までの間、農薬を散布するのは基本たった3回。カスケードは最も防除に気を付けたい結球前(2回目)の散布時に使用するのだそう。「キャベツの場合は、4月下旬頃の結球し始めの時期にコナガも発生し始めますから、そのタイミングで散布します。当初は、2000倍で使っていましたが、4000倍にしても同じ効果を得られたので、今は4000倍を標準に使っています。それにカスケードは残効性が高く、散布回数も少なくすむので助かっています。また、私のところでは『天敵利用で農薬半減』をモットーに栽培していますので、従来の農薬のようにすべての虫を駆除してしまわずに、土着天敵の益虫、つまりキャベツ畑の蜘蛛(くも)クモにはやさしいという点も非常に使い勝手がいいですね」
写真(左)JAさいたま 北部統括部 営農経済課/國嶋さん(右)内田さん
消費者思いの農家にこそ知ってもらいたいカスケードの有効性
キャベツの他にも、内田さんはブロッコリーやネギなど年間60品目もの野菜を栽培しています。「カスケードは適用作物も幅広くて、うちみたいな多品目農家には使いやすいですね。今年はネギにアザミウマや新種のハモグリバエの被害が出てしまったんですが、それに対してもカスケードは効果がありました。食害で困っている農家には、ぜひカスケードの有効性を教えてあげたいですね」。生産者として、消費者に安全でおいしい野菜を食べてもらいたいと一生懸命に取り組んでいる農家にこそ、カスケードの有効性を知らせたいと力が入る内田さん。ベジファーム北本は、今年11月に埼玉県農業大賞を受賞し、内田さんには今後もさらなる活躍が期待されています。「目標としていた賞をいただけて大変うれしいです。ですが、これは私の歴史のひとつ、通過点です。これからも常に消費者目線に立ち、消費者に喜ばれるものは何かを考えながら、今まで以上に熱意を持って農業に取り組んでいきたいと思っています」